「きちんと○○していたらトラブルは防げた」をきちんと表現する | それゆけ西表島

「きちんと○○していたらトラブルは防げた」をきちんと表現する

ソフトウェア業界においてなんらかのトラブルがあると、トラブルの内容と共に、「きちんとテストしないからだ」「きちんと設計しないからだ」というコメントが報じられる。非常に無意味なコメントのように思う。


まるで関わった人たちの不注意、もしくは故意に失敗させたかのような言い方だが、実際はスキル不足、時間不足、予算不足の複合要因であろうことは想像に難くない。失敗原因を取り除けば成功するのではなくて、何かを足さないとうまくいかないということだ。


例えば、スキルのある人材の投入、スケジュールの延長、予算の追加確保等であるが、どれもプロジェクトの状況に流されていては得ることはできないものばかりである。プロジェクト内のスタッフは出来るだけ与えられたものだけを使って自分達の力だけでなんとかしようとするが、なんともならない場合に失敗という結果になる。


そう考えると、「きちんと○○していたらトラブルは防げた」というのは、「外部の力を利用していたらトラブルは防げた」、「スケジュールを延長していたらトラブルを防げた」、「予算をもう少し確保できていればトラブルを防げた」というような表現になるのではないだろうか。


無いものねだりのようにも聞こえるが、プロジェクトが失敗するのと、事前に失敗を予測して対応するのとの二者択一なので、どちらかを選択する以外にない。選択肢が無いと思っているプロジェクト管理者は失敗の道を無意識で選んでいるだけである。


さて、上記の具体的なコメントと、「きちんと○○していたら~」とを比べると、責任の所在が現場から上層部に移ってきたような気はしないだろうか。プロジェクトの失敗が現場にあるかのようなコメントはよろしくないのでなるべく正確な表現を期したいところである。


もちろんのことながら、開発者がたまに他のプロジェクトの話を聞いて、「それはきちんと設計してないから悪い」というような言葉もなるべくやめにしたい。具体的な発言で前向きに評価していけるのがベストではないかと思う。